住まいづくりの判断整理アドバイザー
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一級建築士が、土地探し・間取り検討・住まいづくりの進め方を第三者の立場で整理するアドバイザリーです。

敷地条件や法規、暮らし方を丁寧に読み解き、正解を押し付けるのではなく、自分たちで判断できる状態をつくることを大切にしています。

バウスベア教会_Bagsvaerd kirke

バウスベア教会(Bagsværd Church)は、デンマーク郊外に建つヨーン・ウッツォン設計の教会です。有機的な曲面を波打つ天井が特徴的な建築空間を有しており、重々しい天井のヴォリューム(塊)の表面が自然光により柔らかな印象を与えている。

外観は驚くほど素朴なのに、内部に入ると天井の“雲のような曲面”が光を受け止め、空間の表情が一気に変わります。

ヨーン・ウツソン(Jorn Utzon, 1918年4月9日 – 2008年11月29日)は、デンマーク・コペンハーゲン出身の建築家。シドニー・オペラハウスの画期的なデザインで、高く評価されている建築家。

個人的にはこの天井の曲面を見た時から、いつか実物を見に行ってみたいと思っていた空間。実際に見てみると、想定していたよりマッシブなヴォリューム感。重々しいと感じながらも、天井の高さを変えることで、空間の雰囲気は軽快な印象に変わる。

全体的な印象は室内が白で統一されており、無機質な印象がありつつも、手触りのある仕上げが施されている。

バウスベア教会(バウスヴェア教会/Bagsværd Church)の見どころは、外観ではなく内部の豊かさです。とはいえ外は静かな印象にも関わらず、内部に入ったら一点変わり、豊かな表情が目に入る。その対比を味わうのも醍醐味。
その中心にあるのが、礼拝堂の天井です。雲のような曲面が光を受け止め、拡散し、空間の空気そのものを柔らかく変える。建築としての主張は抑えられているのに、入った瞬間に「光の質」が変わったことだけは確実に分かります。
写真だけでは分かりにくいですが、主題としては、光がどのように入ってくるか?素材の表情はどう変化するか?によって空間が作られていることを体感する建築です。

雲の天井:光を拡散する曲面の仕掛け

礼拝堂の天井は、彫刻のように“見せる”ための曲面ではなく、光を整えるための装置です。
平らな天井は光を均一にはしますが、空間に表情を与えにくい。一方で強い直射光は、陰影のコントラストを作りすぎて、祈りの場としては落ち着かない。そこで、雲のような曲面が効いてきます。

曲面は、光を一度受け止めて、面に沿って滑らせ、柔らかく散らす。
その結果、空間には「明るさ」よりも先に、明るさのグラデーションが生まれます。視線を天井に上げたとき、形が目に入るというより、光が“空間の上部を満たしている”感覚が残る。
バウスベアの天井は、天井そのものというより、光の状態を設計していると言った方が近いです。

歩くほど変わる:礼拝堂の奥行きの作り方

この教会は、入口で一枚の絵として理解するより、歩いて“変化”を回収する建築です。
視点が少し動くだけで、天井の曲面が見せる面が変わり、光の濃淡が入れ替わる。固定の正解があるというより、移動に合わせて空間が更新される。つまり、体験の単位が「眺め」ではなく「歩行」になっています。

奥行きの作り方も同じです。
空間は単に長いのではなく、天井の曲面と光の落ち方が、距離に“リズム”をつくります。前へ進むほど、光は均質になりすぎず、しかし強くドラマチックにもならない。
礼拝堂の奥行きは、寸法だけで成立しているのではなく、光の質が段階的に整えられることで成立している。歩くほどに、それが分かります。

外観が静かな理由:都市の中で“目立たない建築”

外観を見たとき、肩透かしを食らう人もいるかもしれません。象徴性や記号性で引っ張るのではなく、周囲の住宅地に紛れるような輪郭で、建築が“前に出ない”ように整えられているからです。

この静けさは、弱さではなく意志です。
教会を「見せるモニュメント」にせず、内側で起きる体験——光、沈黙、集い——を主役にする。外で語りすぎないぶん、内部に入った瞬間の落差が強く働きます。
街の中で目立たないことは、建築の価値を下げるのではなく、内部の密度を成立させる前提条件になっている。バウスベア教会は、その順番が徹底されています。

外観はこれが本当に教会なのか?と思ってしまうけれど、神聖な場所という意味では少し距離を保ちたい方が良いのかもしれない。

外は矩形、中は曲面と相反するイメージがあるが、過度な装飾で目立つ教会にはしたくないという意志が感じられた。デンマークではいくつか教会建築を巡ったが、その中でも特異な存在であることは間違いない。

DATA

バウスベア教会/Bagsvaerd kirke

【Type】建築/Architecture
【Sort】教会/Church
【Site】Taxvej 16, 2880 Bagsværd, デンマーク
【Architect】ヨーン・ウツソン/Jorn Utzon 

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