ambitect
貯める・探す・描く・つくる・暮らす
2014年に設立されたデザインディレクション『ambitect』。建築に関わる5つの力(貯める・探す・描く・つくる・暮らす)をベースとした、デザインコンサルタントを行う。SNSにて暮らしの情報を発信し、2023年より『暮らしの窓口』を開設。

住宅の役割

建築に託されていること。
建築でしかできないこと。

建築には役割がある。

そして住宅にもまた役割があり、根源的な部分は昔から変わりはないはずである。

建築について

色々な捉え方はあるかもしれないけれど、建築の役割は大きく2つに分けられる。

建築の役割

①シェルター shelter
家としての機能。人を雨風や外敵から守ること。

②象徴 symbol
記念碑としての機能。後世に情報を残すこと。

本来の建築はそのどちらかにカテゴライズされることで、単純であったのかもしれないが、現代において様々なニーズを許容するため、建築の姿は大きく形を変えてきた。

時代背景により建築が語られることは大いにある。
それは過去の建築と比較する際に重要なファクターでもあるからである。

大衆経済との複雑な関係を持たざるを得ない状況も然り。時代背景をどのように捉えるかによって建築は語ることが可能であり、役割もその文脈の中で顕著にみられる。

①シェルター

人を保護する施設や場所。英語のshelter。シェルターは、外からの侵害を防ぎ安全を保つ機能を備えていて、危険や攻撃から保護するための施設だけでなく、暑熱、風雨などを避けるための場所や設備をも含む幅広い用語である。

緊急時の避難場所として、地下室やコンクリート構造の躯体に囲われ、外的な衝撃から身を守ることもあるかもしれないが、一般的な住宅においては、その機能はほとんど必要ない。(一部の富裕層は、有事の際の避難場所として所有している)

日々の生活の中で、必要不可欠な機能が、外部の環境から、一歩距離を取ることのできる、一定の住環境。温度を一定に保てる、湿度や温度差が少ないなどの、快適な温熱環境。なにかに集中できる場所。楽しく日常を過ごすことのできる場所。

地球の地形を利用して、そこを住居にするタイプが自然由来のシェルターである

シェルターは自然の地形を利用したものが始まりであると思われる。洞窟が最も自然のシェルターを顕著に示している。横向きに穴を掘っている洞窟が最もイメージしやすく、下向きに穴を掘るのは竪穴式住居である。横穴の洞窟は雨風を防ぎ、下向きに穴を掘れば風は遮ることができる(ただし、窪地は雨には弱くなるイメージがある)。

また洞窟は、家としてだけでなく、信仰・祭祀・修業の場であったり、墓地、栽培養殖場、氷室 ・貯蔵庫・醸成庫、洞窟治療所などとして利用されてきました。自然由来の空間であるため、文明が発達する以前から、長い時間利用され続けていますので、非常に頑丈で、万能なシェルターとも言えると思います。

一方で自然由来のシェルターは自然災害の影響を直接受けるため、災害時に弱みがある。河川の氾濫、土砂くずれなど、たとえ自然の地形を利用していたとしても、弱い部分がある。

自然由来のシェルターの種類
  1. 自然洞窟・岩陰(自然の侵食によって生まれた屋根)
  2. 人工洞窟(横穴)
  3. 竪穴式住居(地下)

人工的に構築した、シェルターのこと=建築物

そこで登場するのが、人工的に屋根、壁、床などを構築した、建築物(シェルター)である。自然災害から身を守ること、食料を守ることが、建築をつくる大きな目的である。

地面から浮かせるように床面を高く上げます。このことにより、地表面で起こりうる災害を逃れられることができます。また、通風が得られることで居住環境の向上、動物の侵入も防ぐことができ、家としての居心地というものに、重きを置くようになってきました。

また、洞窟と同じような環境を居住性に最適だと思われる場所で再現する、石積み・煉瓦積みの組積造も人工的な建築物のひとつです。

あとは常に移動し続けて生活を送る、遊牧民族には移動式住居であるゲルで構築・撤収が比較的容易な工夫がされているものもある。

これらは暮らしのスタイル、あるいは調達できる建築資材に応じて地域ごとに使い分けられ、それぞれ発展を遂げることになるのです。

人工的なシェルターの種類
  1. 高床式住居・倉庫(地面から浮かせる)
  2. 組石造(洞窟タイプ)
  3. 移動式住居・ゲル(移動タイプ)

②象徴

建築の中でも住宅に絞れば、「マイホーム=戸建て=家族の象徴」でもあると思います。我が家。家に帰ってきた時に感じる、安心感。例えば家の大きさ、塀の高さ、外装材による違い、マンションであれば、タワーマンションの上層・下層階など、グレードにより、社会的地位を表しているような気もします。

ぼんやりと頭に思い描くイメージが「象徴=イメージ」だと思います。「〇〇さんの家」というイメージ。お隣さんのイメージ、地域の中の豪邸のイメージ、分譲エリアのイメージといった個別のイメージ。それらが、いくつも集まって、「まちのイメージ」が出来上がっていく。

住宅は生きるための器

生きるための器であり、生活の場であり、ある人にとっては創造のための空間である。
住宅にはシェルターとしての役割はもちろんあるが、個々人の生き方を受け止める役割がある。

その他にも、土地の文化や風土を受け止めるのが住宅の姿としても考えられるし、もっと踏み込むと家族との団欒、趣味の時間、職住一体など様々なニーズがある。

その中で住宅の役割は、重きはどこにあるのだろうか。

何十年も住み続けるものとして考えるのか、仮の住まいとして考えるのか。

年齢によって価値観は変わるかもしれない。人によっては変わらないかもしれない。それは環境が変わるかどうかに依存するような気もする。

しかしながら、生きるということを前提で住宅を考えると究極はシェルターなのだと思う。

住処の本質

食うこと、寝ること。くつろげること。身を守ること。

住処について思うこと。

食うこと

「食うこと」をするために、食材の下ごしらえ、調理をする。料理をするためのキッチン、食べるためのダイニング。キッチンからダイニングテーブルへ、料理を運び、食事をする。そして食べ終われば、キッチンのシンクで洗い物をして、食器を片付ける。

これらが一連の流れで、これが1日3食、ないし2食は行われるわけであって、毎日を過ごすための「食うこと」をする場所は、清潔さが大切なことは言わずもがな、回数が多いため効率が求められるとも言える。

寝ること

「寝ること」をするために、お風呂の湯船で体を温め、リラックスした状態を整える。本を読んだり、考えをまとめたり、1日を振り返ったり、晩酌をしたり、明日の1日の準備をする。そして、寝室の寝床に入り、ウトウトしながらも眠くなったら、眠りにつく。

体を休めるために、副交感神経を刺激しながら、部屋の明るさや、温度調節は居心地の良い設定にしておきたい。「寝ること」をする場所は、静かで集中できるような寝室の環境が求められるとも言える。

くつろげること

「くつろげること」をするために、リビングルーム、ライブラリーなどの余白が家の中にあると良い。必ずしも必要ではないが、あると暮らしが豊かになる。そして、くつろぐために居心地の良い椅子(ソファなど)は欠かせない。

お気に入りの家具で、お気に入りの時間を過ごす。束の間のコーヒーブレイク、お菓子のティータイム(アフタヌーンティーとでも言うものか)。団欒の時間でもあり、人が集まったり、一人の時間でも居心地の良い空間にしたい。

身を守ること

「身を守ること」をするために、屋根・外壁は基本的に窓・扉(開口部)が少なく良い。窓は侵入される弱点なので、必要な分だけ設ける。家の中は安全であるべきなので、暮らしの器としての家は、閉ざされたイメージである。

日本は地震大国なので、耐震性には気を遣う。住宅であれば、耐震等級3は目指しておきたい。構造的に見た目が不安定なものは、安心感がないように感じられるため、あまりお勧めはできない。

住むという機能の本質について考えたとしたら、家での行動は非常に限られていて、何をするのかを突き詰めて考えていくと、家のサイズは案外小さくてすむのかもしれない。

しかしながら、趣味という各々の生きるための目的があり、それらを実現するために大きな箱が必要なこともある。箱のサイズは無限大に大きくすることもできるが、一方で経済的な側面もある訳で、限られたスペースでいかに楽しむかということが大切な気がする。

人は、自分にとって家に何を重要視するのか。

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