madorismの間取りをつくる建築家
原宏佑(はらこうすけ)
鎌倉市在住の建築家。

関東近辺で約3年の土地探しを経て、30代で北鎌倉に自邸を建築。家づくりを通して、物件探しに大ハマり、今でも鎌倉の物件情報に目がない。「鎌倉で次住むならここが一番だ!」を探し続けて、さすがに2軒目は自身では難しいので、誰かに実現してほしいと心から思い、間取りにストーリーを込めて日々作成している。

溜池の屋形

溜池都市「岸和田」
溜池に浮かぶ水質浄化装置である「屋形」

水を貯めている期間は動植物のための浮島として、水を抜いている期間はまちの人のための公園施設/遊具として機能する。
これからの溜池の新しい風景・システムの提案。

ため池のデザイン | 水質浄化システムのイノベーション

ため池をまちの中の自然公園としてとらえ
”デザイン”を通じてイノベーションする。

ため池の良いところも悪いところも含めて、現状を把握した上で最適なソリューションを導き出す。

今までとは異なる視点からため池について考えていきたい。

主要な条件
・まず第一にため池自体の水質浄化システムを改善し、公共インフラ施設を整備する。
・大規模な投資ではなく、身近なことからはじめられる。
・継続的に持続可能なシステムを構築する。
・様々な可能性を秘めているため池の活用方法。
・3Kを解消する。
・ため池の価値を再評価する。

徐々に失われていく岸和田の溜池の姿

あたりまえのまち / かけがえのないもの

一度失ったものを取り戻すことはできず、すべての出来事を元に戻すことはできない。

現在ある状況は引き継がなければならない。

経済的な利点を失いつつあるため池と開発が進む新興住宅地をリセットするのではなく、その状況を引き継ぐことで新たなまちを目指す。
風景や自然、風土、文化のように、ゆっくり時を刻み、徐々に移ろいゆく建築。

元来ため池では灌漑や管理のために年に二度水がなくなる。

この時ため池の風景が反転する。

揺らぐ水面や通り抜ける風と共に風景の位相に呼応する屋形を置くことで、水上に新たな居場所をもたらす。

動植物は多様な土壌を手にし、人々は徐々にその中に呼び込まれる。

そして多様な生物との関わりを通じて、人々に引き継がれてきた歴史の一擲を投じる。

溜池の新しい風景・システム

水を貯めている期間は動植物のための浮島として、水を抜いている期間はまちの人のための公園施設/遊具として機能する。これからの溜池の新しい風景・システムの提案。

なげきの溜池

1 | PUBLIC INFRASTRUCTURE | 公共インフラである”溜池”

近年の都市開発の中で忘れられた溜池の本来の価値。

・水を貯水できる、池。
・水を利用するための施設、水利施設。
・防災貯水槽

それは稲作にとって必要なまちの公共インフラであり、自然のダムであった。

ため池の慢性的な老朽化、管理の難しさ。水質汚染による悪臭、ごみの不法投棄など近隣住民の生活環境の低下につながっているのは紛れもない事実ではある。農業からの社会システムの変化により、本来の価値に直接的に関わる人たちが少なくなっていることを暗示している。

使用しなければいつかは廃れる。それは自然の理ではあるが。

先人の知恵が詰まった遺産として、残っていくため池があってもよいのではないのだろうか。

2 | PROBLEM INSTITUTION | 溜池が抱えている問題

ため池が抱えている問題は、”継続して存在し続けること”の価値を未だに見出せないでいることである。

わたしたちの生活に関わりをもつこと。
ため池のサイクルの中になんらかの「関わりのためのシステム」を構築することができれば、ため池の存在価値を再定義することが可能ではないか。

3 | DEVELOP WATER PURIFICATION | 水質浄化+αの価値を創造する必要性

第一に水質浄化システムの構築。
その次にわたしたちの生活との関わり方を変える建築的介入が必要である。

かつてため池はわたしたちの生活に無くてはならない存在であった。これまでの関わり方でない、新しい価値を生み出す必要があるのではないかと思う。

農業の必要がなくなった場所であれば、ため池の価値はなくなるのかもしれない。しかし、その豊富な貯水能力、水害を防ぐ自然のダム。豊かな自然環境など重要な環境資源であることを見直す必要があるのではないか。

ため池は親水空間、自然との関わり、コミュニティの場としての可能性を秘めているとともに、災害対策用の調整池、飲料水用など、生活する上でも欠かせないものである。

4 | DISAPPEARED FROM HOMETOWN | 姿を消していく溜池

岸和田のまちでも、ため池は埋め立てられる傾向にあり。
建物の計画地として利用され、わたしたちの生活を支えてくれている。

農業用水を供給するという本来の役割を失ってしまった溜池は急速にその姿を失っていると同時に、わたしたちは先人が築いてくれたこのまちにとってかけがえのない重要なものを失いつつあるという事実を知っている必要がある。

1959年(昭和34年)1725カ所
1988年(昭和63年)700カ所

今、ため池はどれだけの数が残っているのだろうか。

ため池を「まもる」「いかす」「つなぐ」ための工夫と”仕掛け”

「まもる」-適正な管理

(1)管理者意識の向上と施設点検の定着
(2)緊急に対策を講じるべきため池等の整備
(3)減災対策の推進
(4)管理体制の維持・強化

「いかす」-多面的機能の発揮の促進

(5)多面的機能の理解の促進
(6)地域防災機能の向上
(7)地域の環境保全と景観形成
(8)地域の元気づくり

「つなぐ」-次世代への継承

(9)歴史や文化等の記録・伝承
(10)広報活動の推進
(11)次世代を担う人と組織づくりの推進

2012年9月
ため池公園整備計画
公園内施設、休憩所
【Type】遊具/Playground equipment
【Sort】ため池水質浄化装置/Water purification of ponds
【Site】岸和田市/Kishiwada