madorismの間取りをつくる建築家
原宏佑(はらこうすけ)
鎌倉市在住の建築家。

関東近辺で約3年の土地探しを経て、30代で北鎌倉に自邸を建築。家づくりを通して、物件探しに大ハマり、今でも鎌倉の物件情報に目がない。「鎌倉で次住むならここが一番だ!」を探し続けて、さすがに2軒目は自身では難しいので、誰かに実現してほしいと心から思い、間取りにストーリーを込めて日々作成している。

スタウンス・ホルト教会_Stavns holtkirken

スタウンス・ホルト教会はデンマークの郊外ファールムに建っている。建築家であるヨハン・オットー・フォン・スプレッケルセンはデンマーク国内でもいくつかの近代的な教会建築の設計に携わっているが、フランス・パリのラ・デファンス地区にある「新凱旋門(グランダルシュ)」を設計したことで最もよく知られているが教会建築の煉瓦の佇まいは一見の価値がある。

教会空間の中心に立方体の大きな空間は光に包まれている。自然光を室内に取り込む開口部はキュービックな空間の天井四辺の天井に限定されている。

煉瓦積みの重厚感のある壁面はその凹凸が故に、上から下へとグラデーショナルな明暗をもつテクスチャに変化していく。

北欧建築ならではの特徴として、室内の照明器具は光源が見えないデザインになっており、北欧の空間性を体験することができる。木とレンガと布、そして金属等の素材の組み合わせも見どころの一つである。

住宅レベルの空間ではなく、教会といった大きなスケールになった時に、照明器具をどのように扱うのか課題になるが、大きなシャンデリアで空間を照らすというのも手法としてあるが、このスタウンス・ホルト教会においては、グリッドに整然とペンダント照明が並べられており、それぞれの座席の照度を均一にする意図が感じられる。

平面形状は大中小といった、大きさの異なるの正方形がいくつか並べられており、それぞれ嵌合していたり、離れていたり、形式的に使用したりなど、様々な記号として「正方形」が空間に現れる。

それにしても、このトップライトからの光の空間は圧巻です。ルイスカーンのエクセター図書館であったり、イェール大学のブリティッシュ・アート・センターと同様の空間性を感じます。

レンガの重々しい空間が、軽快な空間に感じられるんですよね。普通は屋根ってなんか重いなと、重力を感じるんですが、その重力に逆らうかのように、まるで屋根が浮いているような感覚です。

ルイス・カーンの建築はコンクリート仕上げが多いのですが、レンガ張りだとこんな感じなのかなと思ったりします。スタウンス・ホルト教会の内壁にリブ柱があるので、これが構造体になっているんだろうとは思います。

また、建物の平面的な配置が対角線を軸としているので、そこをから派生するシンメトリーとアシンメトリーが見えてくるかと思います。そして、整然となりがちなグリッド空間が部屋の機能を部分としてを盛り込むことによって、徐々に馴染んでいるのもポイントかと思います。

家具や什器、祭壇のデザインに統一感があり、ひとつひとつデザインされていることが目に見えてわかります。この絶妙に傾斜がかかった座面もいいですよね。なんか座りたくなる。背もたれのトップの丸みを帯びた部材が使われており良いアクセントになっていて、空間に柔らかな印象を与えます。

左奥に先ほどの教会の大空間がありました。そして対角線上に、こちらの中庭が配置されています。

この対比的な外と内の空間。2つの大きな庭のような空間がこの建築を構成しています。

そして、何気にこの雨樋も好きな作り方ですね。
村野藤吾の箱根プリンスでもここぞとばかりに軒樋をのばして、建物の外側に雨水を流すという手法がありましたが、この樋があるだけで、雨の日は雨の流れを見ることができますし、雨から晴れに変わり、水滴が照らされるなんてことがあれば、それも風情があり美しいと思います。

教会というと室内でじっとしなくてはならない、重々しいイメージでしたが、スタウンス・ホルト教会では休憩時間というかリフレッシュする時に庭を眺められるというのも、プラン的に考えられているのではないかと感じました。

スタウンス・ホルト教会はベージュのような優しい黄色の煉瓦が特徴的な外観の建物で、バス停から降りて道路から眺めると、その優しい印象の外観が森の中に馴染んでいる様子が伺える。

DATA

スタウンスホルト教会/Stavns holtkirken

【Type】建築/Architecture
【Sort】教会/Church
【Site】Stavnsholtvej 25, 3520 Farum, デンマーク
【Architect】ヨハン・オットー・フォン・スプレッケルセン/Johan Otto von Spreckelsen

よかったらシェアしてね!