墨田ビル
建物のファサードとしては典型的なペンシルビルとなり、都市部に残された、日本的な都市の風景となる。
塔状に積まれた極めて細長い空間に「透明性と閉鎖性の両方の性質を持つ空間」や「公と私の空間」「外であり、内である空間」などといった”曖昧な空間性”を組み込みたい。
東京都の東に位置する墨田区は近年、スカイツリーを中心とした開発が行われており周辺の価値が高くなることが考えられる。
浅草からスカイツリー(押上駅)までの距離は1駅分しかないこともあり、インバウンドで訪れる海外旅行客のほとんどは徒歩で移動している現状がある。また、都市計画的にスカイツリー周辺が開発用地となっていることもあり、既に行政側で様々な事業計画が発表されている。
①踏切の高架化(東側)
東武伊勢崎線(とうきょうスカイツリー駅付近)連続立体交差事業
②スカイツリー駅の移設(150m)
鉄道・道路・地区計画に関する都市計画素案のあらまし
③浅草へのアクセスの強化など(西側)
浅草・東京スカイツリー®を結び、エリアの回遊性向上
その中で今後、インバウンドの需要が高い浅草との連携によりスカイツリー駅周辺への投資が活発に行われる可能性がある。
ホテル、ショップ、レストランはもちろん、利便性が高く職住一体のSOHOとしての価値も高まる、墨田区スカイツリー西側エリア(本所吾妻橋駅周辺)におけるプロジェクト概要について記載します。
計画敷地は東京都墨田区の下町に位置し、”約10坪”の狭小地で「間口2.8m , 奥行き12m」の”鰻の寝床”のように細長い形をしている。
場所は駅からほど近く、比較的利便性が高いと考えられることから、事業としての一定の収益性の確保が十分可能だと考えられる。そのことから、できる限り容積率いっぱいまで面積を広げることをクライアントは求めていた。
ただそこに辿り着くまでには問題がある。
まず1つ目は
敷地がビルの谷間に挟まれていることである。
施工上の難しさと、限られた構造形式から計画自体を左右する間口の広さをどう確保できるかが課題である。
そして、2つ目は
用途地域上高さ制限はないと考えて良い条件の中で、唯一建物のプロポーションを決定する要因は「建物の構造的な高さの限界値」ということである。
間口の狭さゆえに塔状比を考慮すると、通常の建物の場合、高さは10mあるいは15m程度となり、3階〜4階建て(階高を抑えると5階建て)となる。
しかし、今回の建物の構成としては低層部を事業用に、高層部を住居用として考えている。
(容積率的に可能な計画 : 1階を広場のような比較的オープンなスペース(ギャラリーorアトリエ)として開放。2、3階を賃貸住宅として活用。4,5,6階を住居として利用。)
狭小地というプラン上の制約も多い中、施工面、構造面での工夫が必要な建物となる。
インバウンド等、国際的な視点で都市との関わりを考える中で、伝統的な手法を再解釈することによって生まれる、曖昧な空間を実現し、日本文化に少しでも触れてもらえることができれば良い。
2019年4月
賃貸併用住宅
【Type】建築/Architecture
【Sort】集合住宅/Apartment house
【Site】東京都墨田区/Tokyo