madorismの間取りをつくる建築家
原宏佑(はらこうすけ)
鎌倉市在住の建築家。

関東近辺で約3年の土地探しを経て、30代で北鎌倉に自邸を建築。家づくりを通して、物件探しに大ハマり、今でも鎌倉の物件情報に目がない。「鎌倉で次住むならここが一番だ!」を探し続けて、さすがに2軒目は自身では難しいので、誰かに実現してほしいと心から思い、間取りにストーリーを込めて日々作成している。

Maison Louis Carré_メゾン・ルイ・カレ邸

パリの郊外にある、アルヴァ・アアルトが1959年に設計したフランスに唯一現存する住宅、Maison Louis Carré(ルイ・カレ邸)。

この住宅に魅力を感じずにいられないのは、家の中にある、あらゆるものがアアルトのオリジナルデザインであり、綿密に設計されているからである。

それはつまり、オーダーメイドの空間のことである。

オリジナルとは
「根源の、最初の、初期の、起源の、独創的な、創意に富む、奇抜な、新奇な、原型の」
といった意味があるが、アアルトの感覚的な形態が顕著に見られ、無意識的(本能的な意味で)にデザインされているため、「根源的」な意味での”オリジナル”が当てはまるような気がする。

地形に沿った斜め屋根の建築のヴォリュームの素晴らしさは言わずもがな。ひとつひとつの部屋の設えが組み合わさることによって、他と比べることのできない柔らかい印象をもった建築となっている。

これこそまさに「オンリーワンの建築」と云ふにふさわしい家だと感じた。

この住宅は、有名な画商ルイ・カレ氏のために建てられたものである。敷地は丘の頂上にあり、室内からは周囲の素晴らしい眺めが得られる。
建物の外観は変化に大小のヴォリュームが集まってできた様に変化に富み、室内のスペースにそれぞれ個別の戸外スペースを与えるようになっている。

また、内部空間の中心に据えられたエントランスホールであるホワイエ(余白)から派生したかのような小さなヴォリューム群で構成されているようにも見え、かつ外側(つまり外部からの影響)からの要求によって切り欠かれているようにも見える。

つまり、この住宅には外・内・外(中間領域)が意図的に生み出されており、まるで外(外部空間である庭とテラス)と内(大小のヴォリューム)と外(ホワイエ)が均衡を保ち、内部の機能的な要望と外部の環境的な要望が成立した、極めて曖昧な状態が生み出されていると考えられる。

内と外の関係性において日本建築の土縁のような空間に感じられ「曖昧の十型」でいうところの第7類型に該当すると思われる。

この住宅は個人の生活の場であると同時に、たくさんの美術品のためのスペースでもあり、そのため光の扱いには特に注意が払われている。

太陽の光が制限され、自然光の代わりに特別にデザインされた照明器具があちこちに置かれている。

今日、建築家にとって出来る限りすべてのディテールや備品までをデザインする機会に出会うことは滅多にないだろう。アアルトはここで大役を果たし、カレ邸では見事な調和の中に力強さが漲っている。

照明は空間を選ぶ。
散りばめられた小さな光の灯り。
手元を照らす光。
天井を照らす光。
壁を照らす光。
植物を照らす光。

DATA

メゾン・ルイ・カレ邸/Maison Louis Carré

【Type】建築/Architecture
【Sort】住宅/House
【Site】2 Chem. du Saint-Sacrement, 78490 Bazoches-sur-Guyonne, フランス
【Architect】アルヴァ・アアルト/Alvar Aalto

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