madorismの間取りをつくる建築家
原宏佑(はらこうすけ)
鎌倉市在住の建築家。

関東近辺で約3年の土地探しを経て、30代で北鎌倉に自邸を建築。家づくりを通して、物件探しに大ハマり、今でも鎌倉の物件情報に目がない。「鎌倉で次住むならここが一番だ!」を探し続けて、さすがに2軒目は自身では難しいので、誰かに実現してほしいと心から思い、間取りにストーリーを込めて日々作成している。

TEN TYPES OF AMBIGUITY_日本建築の”10”の空間

数寄屋の
日本的空間
曖昧の十型

日本の空間の”真”、数寄屋の空間は”曖昧”である。”曖昧な空間”は数寄屋に通じている。
わたしたちの身の回りを取り巻く”環境”=「気候、風土、言葉、文化、住まい、人とのつながり」はそれぞれが複雑に混ざり合いながら、独自の進化を遂げてきた。
様々なモノを受け入れ、適応してきたことが日本の本質的な事象であり、あらゆることを「曖昧な状態」に留めておく”空気感”はまさに日本固有の”環境”とでも言うべきものであり、それは空間的にも昇華されている。
常に安定状態にある中で生まれるものではなく、多種多様な環境の中から取捨選択し、最適なものへの移行とでも言うべき、不安定な安定への、ほんの僅かな状態が”曖昧”の本質である。
今や、日本建築には世界的にも類を見ないほどの豊かな空間が生まれている。
その”源流”として考えられているのが「数寄屋」である。

What’s AMBIGUITY_曖昧の意味

曖昧=洗練
明快な解釈
多様な意味


ここでいう曖昧とは、単なる概念ではなく
本質的な曖昧を追求している。

というのは曖昧であるということは、曖昧でないことの裏返しであり、あらゆる要素が単純化された後に結果として曖昧さが残った場合のことを対象としている。

不明瞭、不明確などといったことは「曖昧」とはまったくの別次元で考えられるべきであり、意味を正確にたどっていくと全く異なる土俵で考えなけらばならないことが多い。

「曖昧」とは非常に明快でありながらも、意味の多様な場合であったり、様々な解釈が可能である状況のことを指す。

ambiguityの多義性と二義性の区別について

・曖昧とは何であるのか?
・日本建築/数寄屋にはどのような関係が生まれているのか?
・どのような空間が曖昧なのか?
・なぜ曖昧であると判断できるのか?
・”揺れ”とは何か?
・”和の空間”を現代建築に活かすことができるのか?

00_『曖昧の七つの型』_概念図_ウィリアム・エンプソン著

詩の言の葉
美しさ・儚さ

=曖昧

ウィリアム・エンプソン氏が著した「曖昧の七つの型」という曖昧に関しての類型学的試論。
彼は、詩の美しさは言葉の音調の美しさや、感覚的な雰囲気にあるとし、詩を構成する語(言の葉)が、同時にいくつかの意味を持つ多義性にあると主張し、これを「曖昧」と定義した。
また詩の言葉の「曖昧」を、意味の重なり方の複雑さに従って七つの型に分類し、古今の英詩を仔細に分析した。

今回は建築において、曖昧をその度合いによって分類し、曖昧の捉え方を細分化する。
”曖昧”は日本建築の中に芽生え、あまりにもあたりまえであるが故に、研究はほとんどなされていない。
建築に関しての体系的な分類も存在していないが、建築にも曖昧という概念は存在するし、その空間的な要素について深堀する。
まずはウィリアム・エンプソン氏が7つに分類した曖昧の定義を図式化することで、曖昧に関する理解を深めるとともに、建築の空間要素に落とし込んでいく。

01_Japanese architecture_日本の建築、日本の空間、内外の境界

日本の建築には様々な内と外の関係性が存在している。

その関係性の中に曖昧な空間は存在し、曖昧を類型化することは日本的な建築空間の理解を深めるだけでなく、現代建築においても意義のあることであると考えられる。

02_数寄屋の曖昧な空間_広縁、入側、濡縁、土間庇、土間縁

数寄屋から
曖昧の要素を抽出
類型化する

日本建築の空間の外部には多くの場合、鑑賞のための庭(外を感じるための空間、坪庭も含む)があり、庭(外部)をどのように室内(内部)に取り入れるかということが主題であった。

昔から日本では、内部的外部、外部的内部の空間が多く作られてきた。数寄屋、茶室にいたっては様々な嗜好を凝らした建築が多く存在しており、その代表的な場所が「縁側・濡縁・広縁・入側・土間・土縁」などの中間領域である。

・内とは居室を表し、居間や広間など室内空間として考えられているものを対象とする。

・外とは庭であり、庭園である。庭に関して積極的に開こうとする意図が読み取れる場所を対象とする。

数寄屋の曖昧な空間における内外境界とは「広縁(H)」「入側(I)」「濡縁(N)」「土間庇(DH)」「土間縁(D)」などの中間領域であり、その定義は図面表記があることが必須条件である。

※研究対象建物
勝田邸、孤蓬庵(忘筌)、四君子苑(珍散蓮)、島野邸、對龍山荘、野村碧雲荘、早川邸、絲原邸、霞中庵、滞春亭、竹中邸、灯心亭、一力、菊池家、久我邸、兼六園(夕顔亭)、昭寿苑、なだ萬山茶花荘、暮雨巷、山翠楼、桂離宮(松琴亭、笑意軒)、北方文化博物館、廣誠院、修学院離宮(窮邃亭、隣雲亭)、閑雲亭、美濃幸、林屋邸、成巽閣(清香軒)、団雪庵

03_数寄屋の内と外の境界に曖昧を引き起こす「揺らぎ」の類型化

数寄屋から曖昧を抽出し、曖昧の可能性を示す。
日本建築における境界は内外の関係によって曖昧が生じやすい。
なかでも数寄屋、茶室にいたっては様々な嗜好を凝らした建築が多く存在している。
0か1ではなく、無数に存在するいくつもの層を幾重にも重ねることによって日本建築の豊かさは生まれている。

04_内外の中間領域における揺れの”可視化”

従来の中間領域に対する理解は図1に示すように空間だけでとらえるものであった。

これでは内外の評価を与えるのに非常に困難で曖昧な空間をより複雑にしてしまっている原因であるように思える。

本研究では図2のように断面評価法を用い、天井面と床面に内外の評価を与えることで曖昧を可視化する。

05_『曖昧の十型』_2つの層

曖昧の十型とは、「曖昧の強度」「曖昧の数」を「表層」と「深層」の次元の異なる2つの層として抽出し、”目に見える揺れ”によって十のタイプに分類したものである。

06_中間領域(曖昧な空間)の類型化

大分類4つ
さらに細かくすると
10の型に分類

数寄屋の内外境界に存在する中間領域を断面評価法に基づいて類型化する。
それぞれの事例のグラフから揺れを読み取り、パターンによって分類。
大きく分けて4つ、さらに細かくすると10の型に分類できる。

今まで、単一で一様と思われていた中間領域(今まで詳細に定義されてこなかった名称の空間)には、多様な空間が存在している。

中間領域(曖昧な空間)の中に日本固有の独自に進化を遂げた空間を見出すことができる。

曖昧の十型』(日本建築の”10”の空間)

1_連続

2_分節

3_共存

4_突出

5_繰込

6_延長

7_取込

8_対比

9_侵食

10_衝突

2015年1月
【WEB】Graduate Directory 2015 | Wallpaper* Magazine
【Status】今後が期待される世界の建築学生20人に選出(修士設計)
【Type】建築/Architecture
【Sort】京都御所現代美術館/Kyoto imperial palace contemporary art museum
【Site】京都市/Kyoto

外と内の境界を庭と呼び
小さな1本の木から
背後にそびえる山林たち、見渡す限りの海原まで
そこにある唯一無二の景色を見つけ出し、空間へと投影する
そこにしかない庭が暮らしに溶け込む空間

ver 1.0
窓庭の家

ver 2.0
縦庭の家

ver 3.0
縁庭の家

ver 4.0
坪庭の家

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