リセールバリュー目線|家づくりの予算配分(建物3:土地6:諸費用1)を予算別で、どんな建物になるか考えてみた。
家づくりの資金計画において、資産価値を考慮して予算配分を考えるのが肝。
予算5000万・8000万・1億と仮に設定し、建物の広さ・土地の広さ・車両・利便性について考えてみた。建物3・土地6・諸費用1にすると実際の住居費は年収の8%程度で済む。建物ではなく、土地を優先すべき理由をお伝えいたします。
- どんな人の誰のために?
- 何が問題で?
- どう解決できる?
→
- 予算配分を決めかねている
- 何を優先すればよいかわからない
- 資産価値を考慮した予算配分
建物3:土地6:諸費用1くらい
予算別:建物・土地・車両・交通についてのベンチマークとしてご覧ください。
①予算5000万円の場合
建物:2階建て・木造・延床20坪前後(66m2)・75万/坪
土地:30坪前後
車両:車1台
交通:都内へ約1時間
※住宅ローン支払い:約13万円/月
②予算8000万円の場合
建物:3階建て・木造・延床30坪前後(99m2)・80万/坪
土地:20坪前後
車両:車1台
交通:都内へ約40分
※住宅ローン支払い:約20万円/月
③予算1億円の場合
建物:3階建て・木造・延床35坪前後(115m2)・85万/坪
土地:20坪前後
車両:車1台
交通:都内20分圏内
※住宅ローン支払い:約25万円/月
※建物費用には、照明器具・エアコン・家具・家電・設計費・地盤改良などの、その他の諸経費が含まれていません
上記はあくまで都内へのアクセス、そして共働きであるかどうかは特に考えていません。
- 世帯年収800万〜1600万くらいの振れ幅
- 住居費が年収に占める割合は20%程度
- 6割は土地として資産価値がある。と考えると、実際の住居費は『8%程度』
住む場所の環境や利便性を考慮すると、大体このくらい(66〜115m2)の広さの建物なんだと理解してもらえる良いかと思います。(延床面積には屋根裏収納は含まれていないので、実際は80〜130m2の広さです。)
諸費用1の内訳
諸費用1の中には、
設計費・施工会社の諸経費を10%(建物費用)と仮で設定すると以下のようになります。
- 予算5000万→設計費150万・諸経費150万・予備費200万
- 予算8000万→設計費240万・諸経費240万・予備費320万
- 予算1億→設計費300万・諸経費300万・予備費400万
戸建てだと、最後に気になるのが外構です。どうしても優先順位が低くなりがちなので、予算的にしわ寄せがきてしまいます。
①の場合は、外構も同様に150万(建物費用の10%)とすると、残りの予備費が50万
②の場合は、外構も同様に240万(建物費用の10%)とすると、残りの予備費が80万
③の場合は外構も同様に300万(建物費用の10%)とすると、残りの予備費が100万
②③は土地が狭いので、実際の外構を100万とすれば、まだ予備費としての資金(220万・300万)に余力があり、なんとかなりそうです。ただし、逆に①は土地が広いので、外構費用は抑えないといけないことがわかります。足りない分は貯金を取り崩すか、ローンの借入額を増やすかで補うことになります。
以上が、資産計画のざっくりとしたイメージです。
土地と建物どちらにお金をかけるか?
予算計画において、まず最初に悩むのが、「いくらの土地を探せばいいのか?」わからないこと。そもそも建物の価格もわからないし、予算配分なんてあって無いようなもの。
でもまず予算を決めないと、始めようがない。
建物は価値が年々目減りします。一方、土地は価値が下がりにくい、むしろ稀少性の高いエリアだと上がるくらいです。良い土地さえポジショニングできれば、後にも先にも売却の目処が立ちやすい。将来性を考慮すると家づくりは土地選びで決まると言っても過言ではない。
①安い土地は、建物が高くなるので避けた方が良い
安い土地では、逆に建物5:土地3:諸費用2になる。建物価格が高くなるほど諸費用が高くなるため、コストメリットが小さい。
さきほどの諸費用のなかに、建物価格の10%という掛け率を採用しましたが、建物が高くなるということは、必然的に諸費用が単純に増えるのです。
- 住居費が年収に占める割合は20%程度(変わらない)
- 3割しか土地として資産価値がない。と考えると、実際の住居費は『8→14%程度』
②安い土地でも良い建物を作ることはできるが、コスパは確実に落ちる。
安い土地(変形・傾斜・狭小)で、建物にお金をたくさんかける。素晴らしい建築でなんとかなります。といった建築家の王道的なパターン。全然悪くない、むしろこれこそ建築家の腕の見せ所と思います。
土地が特殊な形をしていると、どうしても建物が高くなります。
→どう考えても、整形で四角い建物の方が作りやすい。
→作りやすいということは安い。
三角だったり台形の土地で四角い建物を建てたくても、小さい四角になったり、面積効率が悪く、十分に土地を活用できなくなります。つまり総じて、安い土地はコスパが悪いのです。
③資産価値の落ちにくい土地を選ぶ
自分が年老いたら、やがて亡くなり、子供が相続したらどうなるのか。そう遠くない少し先の未来を想像すると、土地選びは、よりシビアで難しいものに感じられるかもしれません。
資産価値の落ちにくい土地の選別基準は非常に難しいですが、気負わず、今の自分がその土地が素直に欲しいかどうか。これが最良の判断基準です。なぜなら、将来的に自分と同じような境遇の買主が、この土地の良さをわかるはずだからである。
つまり、その土地に住みたいかどうかは、価格というより。住みたい場所かどうか。をひとつの判断基準とすることも有りなのではないかと思います。
将来性を考慮すると、資産価値の落ちにくい土地にお金をかけるのが鉄則。理由として、土地は建物と比較して価値が下がりにくいからである。稀少性の高いエリアだと上がることもある。
④注文住宅ではメンテナンス性に優れた材料を選定する
建物にお金をかけることを反面教師として、将来的な資産価値がゼロに近い状態に陥ってしまうことが怖くてたまりませんでした。当初は安い土地で良い建築を建てることを目指していたので、いざ自邸を計画する際に随分と悩みました。
注文住宅としてメンテナンス性に優れ、修繕更新のかかりにくい、材料を選定することで、集合住宅で強制的に徴収される管理修繕費は抑えられる傾向にあります。
コストコントロールをするために自由に外壁の材料・断熱性能・各種設備などを選べることも、注文住宅のメリットです。
快適に暮らし続けようとすると、外壁・屋根や住宅設備はすべて修繕・更新が必要です。最新設備の余分な設備は極力省略し、必要なところに予算をかけました。
⑤注文住宅の出口戦略を考えておく
住宅は消費するものであり、そして、将来的な出口戦略(売却・賃貸)も視野に入れて、計画しました。
一般の方にも受け入れてもらえるし、デザインに興味のある方にも受け入れてもらえる。タイムレスデザインと言いますか、普通に・普遍的な家が理想です。
色々と選択肢を考えていくうちに、住宅の出口戦略を重視すると、建物にお金をかけすぎることにデメリットを感じました。
せっかく家を建てるのだけど、贅沢三昧ということは当初から頭にはなく、常に必要なものにはお金をかける。不要なものにはお金をかけない。というスタンスを平然と保つようにしました。
家づくりはオプションだらけの世界で、すぐに沼の中にはまっていきます。
自分が設計するとなると、いくらでも可能性は広がり、その分価格に反映されていきます。しかし、その価格が自分の身に降りかかってくる訳であって、決して目を背けることはできないのです。
資産価値があるかないかは、自分たちが欲しいと思っていて、一般的な人も欲しがるかどうか。を判断基準としていました。また住宅としてどうしても事前に用意しておかなければならないものかどうかがポイントです。
身の丈にあった、というか、自分たちの暮らし方を見直して、納得できるものを手探りで見つける。それが家づくりだと思います。
良い建築とは、建てたら終わりではない。
良い建築とは、良い土地に建っている。そして、それは時間が経っても、もう一度同じように建築を作りたくなる場所に建っている。
それは、安い土地ではなく、明らかに誰もが欲しがる資産価値の高い土地です。さらにその誰もが欲しがる土地に、良い建築が建っていれば、もしかすると建物の価格にも、いくらか転嫁されるかもしれません。
建築家としては、建物に価格をかけてほしい。そう、内心思うのですが、実際に身をもって、建築するということを振り返ってみると、土地の重要性を改めて実感しました。
再現性はあるけど、誰も思いつかないようなクリエイティブな空間を、誰がみても魅力的にできるといいなと思っています。