崖条例で詰まる土地探し|対策が要る/要らないの境界線と、協力者の探し方(鎌倉・逗子)|撤退ラインと攻略手順

崖がある土地は、相場より安いことがあります。
眺望が良い、緑が近い、静か。魅力も強い。
そして鎌倉や逗子は、まさにその魅力が濃いエリアです。
海と山が近く、自然が多く、暮らしの環境としては本当に豊か。
一方で、山の多い土地柄ゆえに高低差のある土地が多いのも特徴です。
土地探しを始めてみると、「平らで素直な土地」の方がむしろ少ないと感じる人もいると思います。
でも、その豊かさとセットで立ちはだかるのが——崖条例です。
土地探しでいちばん詰まったのは、工事車両でも擁壁でもなく崖条例でした。
斜面に対して建物を守る手立て(塀など)が必要になり、できるだけ工事の数を減らすために建築的に解決しようとすると、一部RC造になってコストが跳ねる。
それでも総額は安い。でも、そこにチャレンジするには、協力してくれる工務店や設計事務所が必要で、探すのが本当に骨が折れる。
この記事は、その「詰まり」をほどくための手順書です。
結論から言うと、崖条例のポイントは 「対策が要る/要らないの境界線を早く見極める」こと。
そして、判断ができる状態になったら「最初から“崖地前提で話せる相手”に相談する」ことです。

1. 崖条例で何が起きる?「突然、コストが跳ねる」理由
崖が近い土地で起きるのは、ざっくり言えばこの2つです。
- 建物を崖から離す(後退する)必要が出る
- 離せないなら、「崖に対して建物を守る工作物(塀・擁壁等)」が求められる/求められる可能性がある
ここで重要なのは、コストが跳ねるのは②に入った瞬間だということです。
建物を崖から十分に離せるなら、基本的には「配置を変える」「建てる位置をずらす」で済みます。
この場合、プラン調整は必要でも、家そのものが急に特殊になるわけではありません。だから、コストが大きく上がるとは限りません。
一方で問題は、土地と建物のバランスとして離せない状況にあるときです。
例えば、敷地が小さい/使える平場が限られる/道路や隣地との関係で建てられる範囲が狭い。こうなると「離す」が選べず、守るための対策が必須になります。
この瞬間、家づくりは“普通の家”から外れます。
- 崖側に対する防護の塀・擁壁
- 土圧や水に耐えるための構造の強化(場合によっては一部RC)
- それに伴う造成・排水・外構の追加
といった要素が乗り、結果として「追加の工事=追加のコスト」が発生します。
だから、同じ“崖の近く”でも、離せるか/離せないかで、費用感が急に変わって見えるのです。
さらに厄介なのは、土地の広告や現地の雰囲気だけでは判断できず、「行政の運用」+「現地状況」+「計画」が揃って初めて答えが出ること。
つまり、最初は誰も確信が持てず、全体予算が急に不透明になってしまうのです。
そして予算感が掴めないので、協力してくれる相手がいないと、一向に前に進まない。という状態に陥ってしまいます。
崖条例(がけ条例)は一言でいうと、「がけ(急な斜面)の近くに家を建てるとき、崩落から人命と建物を守るために“ルール(安全措置)を求める”自治体の基準」です。
鎌倉・逗子のように高低差が多い地域では、雨や地震で斜面が崩れたり土砂が流れたりするリスクがゼロではありません。そこで自治体は、一定条件のがけ地に対して、
- がけから建物を離す(後退距離をとる)
- もし離せないなら、建物側を守るための構造や、斜面側を支える工作物(擁壁・防護の塀など)を設ける
といった形で、「危険が起きても被害が出にくい計画」を求めます。
2. まず結論:崖・擁壁は“悪”じゃない。問題は「不確実性」
崖地の土地が安いのは、単に危ないからではなく
- どんな対策が必要になるか分かりにくい(不確実)
- 対策が必要になると、金額が上振れしやすい(採算不安)
- 計画の自由度が落ちる(設計が難しい)
この3つを買い手が嫌うからです。
逆に言えば、不確実性を減らして、コストの上振れ幅を潰せるなら
崖地は「価格差を味方にできる土地」になります。
鎌倉・逗子には、まさにこうした高低差のある土地が多くあります。
海と山が近く、緑が濃く、眺望が抜ける。静けさや風の通り方も含めて、そこでしか得られない魅力がある。
だからこそ重要なのは、崖地を「避けるか、挑むか」で悩んだまま進めないことです。
不確実性を放置したまま進むと、途中で対策が必須になって予算が崩れたり、計画の自由度が一気に落ちたりします。
逆に、必要な確認を先に済ませて“何が必要で、いくらの幅で起こりうるか”をクリアにできれば、崖地はリスクではなく、価格差で魅力を取りにいける選択肢になります。
鎌倉・逗子の土地探しは、条件が厳しいぶん、うまく整理して進めた人ほど“環境の価値”を取りにいけるエリアです。
3. 「対策が要る/要らない」の境界線|最初に見るべき3つ
ここがいちばん重要です。
崖条例の“怖さ”は、対策そのものより、適切な判断をするための「境界線が見えない」ことなので、先に境界線を言葉にしてしまいます。
境界線①:崖(斜面)と建物の関係が“近い”かどうか

- 建物(予定位置)が崖に近いほど、影響が出やすい
- 逆に、十分距離が取れるなら、議論が単純になる
※「距離が何mならOK」という話を一般化するのが難しいのが崖条例の厄介さです。
だからこそ次の②③とセットで見ます。
この写真は土地全体が斜面地で売り出されていた例です。駅から近く破格の価格になっている場合は、大抵がこのように難易度の高い物件であることが多いです。
とはいえ、この土地も数週間で売れていましたし、隣が同様の状況でしたので、実例があるというのは強いと思います。
境界線②:斜面の状態が“水”で悪化していないか

崖トラブルの多くは、水が引き金です。
- 雨のあとに湿っている
- 湧水、苔、流れ跡がある
- 排水がどこへ逃げているか不明
こういう条件が重なるほど、慎重側に倒れます。
なぜ「水」に慎重になるべきか?は直接の制約ではなく、将来リスクの話です。
崖や斜面のトラブルは、地震よりもむしろ水が引き金になることがあります。
理由は単純で、土は乾いている時より、濡れている時の方が弱いからです。
たとえば、雨のあとに斜面がいつも湿っている、湧水がある、苔が目立つ——。
こうした状態は、単に「濡れている」というより、
- 斜面の内部に水が回り、土の中の細かい土砂が流されたり(洗掘)
- 水を含んだ状態が続いて、地盤が緩んでいる兆候だったり
- そもそも水の逃げ道がなく、斜面に水圧が溜まりやすい環境だったり
という可能性を示します。
ここで大事なのは、これらがその場で「建てられない」という直接的な制約になるとは限らない、という点です。
ただし、排水が整理されていない斜面は、今は何も起きていなくても、長い時間をかけて弱くなったり、雨の条件が重なった時に問題が表面化したりするリスクがあります。だから“慎重側になる”価値があります。
さらに鎌倉・逗子のような高低差のある土地では、使わない斜面も含めて敷地として購入するケースが珍しくありません。
斜面を「活用しないから関係ない」と考えがちですが、土地を所有する以上、排水や維持管理の責任は基本的に所有者側に乗ります。
つまり、家の計画そのものより前に、「この斜面の水をどう逃がすか」「将来的な維持管理は現実的か」を確認しておく必要がある、ということです。
境界線③:「配置で逃げる」「土木で守る」「建築で工夫する」で整理
崖地の対策は、考え方として3つに分けられます。
- 配置で逃げる:建物の位置をずらし、崖から距離を取る(後退)
- 土木で守る:塀・擁壁・造成・排水で、斜面側を安定させたり、建物を守る
- 建築で工夫する:段状計画や構造で受ける(部分RC等)ことで、敷地条件に合わせて成立させる
そして基本の考え方はシンプルで、難易度(=検討の重さ)は ①→②→③ の順に上がります。
- 「配置で逃げる」は、プラン調整で成立することが多く、家そのものが特殊になりにくい
- 「土木で守る」は、追加工事が発生しやすく、費用レンジのブレも大きくなる
- 「建築で工夫する」は、構造や納まりまで踏み込むため、設計・施工の難度が上がり、協力者の選定がより重要になる
実際にはこの3つを単独で選ぶというより、
「まず①でできるだけ逃げて、足りない分を②で守り、それでも成立しない時に③を検討する」
という順番で整理すると、判断がブレにくくなります。

土木で守るというのは写真左の工作物のことです。建築で工夫するとは写真右の建築のようなものです。写真ではわかりづらいですが、1階部分が小さくRCで作られていて、2階部分が1階よりも大きく跳ね出しています。
実は鎌倉・逗子は斜面地が多いため、同じ条件で家づくりに挑戦した実例が多くあります。街散歩の際に、同じ条件の家はないかな?と探すことも理解を深め、解像度を高くするための手段です。
4. “建築で解く”と高くなりやすい理由(=土木より安いとは限らない)
「工事の数を減らすために、建築的に解決したい。」
この発想はとても合理的です。土木の対策工事が増えるほど、工程が増え、コストが積み上がっていくからです。
ただし、ここで誤解しやすいポイントがあります。
建築で解く(部分RCなど)=安くなる、とは限りません。
たしかに、土木的な工事が大きく入ると、造成・擁壁・排水・外構など「工事の数」が増えて高くなりやすい。
一方で、建築側で受ける場合も、普通の木造とは別物になります。
- RC部分が増える → 構造コスト、型枠、鉄筋、コンクリート、養生などが増える
- 重機や施工手間が増える → 現場条件によっては段取りが増え、施工側のリスクが見積に乗る
- 納まりが複雑になる → 設計・施工ともに難易度が上がり、工期にも影響しやすい
つまり、「土木で守る」の工事が増えれば高くなるのはもちろんですが、
「建築で工夫する」こと自体にも、しっかりコストがかかります。
そのため、感覚的には“建築で解いた方が安そう”に見えても、実際は劇的な差が出にくいケースもあります。
それでも建築で解く価値があるのは、コストだけでは測れないメリットがあるからです。
例えば、敷地の使い方が成立する、動線や眺望が守れる、工事の種類を整理できる——など。
ただし、そこで予算を守るには「何となくRC」ではなく、設計プロセスの中で
- RC部分の量・面積をできるだけ減らす
- 土木と建築の役割分担を最適化する
- 最小限で成立するラインまで詰める
といった調整が必要になります。
ここを丁寧に打ち合わせで詰められる相手(設計・施工)がいるかどうかで、最終コストは大きく変わります。
5. じゃあ、やめた方がいいのはどんな時?(撤退ライン)
崖地は挑戦して良いケースもあります。
でも撤退した方が合理的な条件もあります。
撤退ライン(複数当てはまるほど撤退寄り)
- 対策の責任が曖昧(誰の擁壁か不明/隣地の同意が必要)
- 斜面の状況が悪い兆候(湧水・湿り・崩れ跡など)がある
- 図面や履歴がなく、何を確認しても不確実性が残る
- 配置に逃げがなく、対策が“必須”なのに費用が読めない
- 予算の上振れに耐えられない(最悪ケースが無理)
この判断を早くできるだけで、土地探しの時間は大きく節約できます。
それでも「どうしてもこの土地が欲しい」場合の考え方
ここまでの撤退ラインに当てはまっていても、眺望や立地など、どうしても手放しがたい魅力がある土地もあります。
その場合は「無理に楽観する」のではなく、最初から追加の手間(=コスト)を織り込んで、“通常の崖地として扱える状態”まで持っていく前提で判断するのが現実的です。
ポイントは、次の3つです。
- 隣地の同意を取る(必要なら)
隣地との合意が前提になるなら、これは“検討の前提条件”です。
不動産会社に動いてもらうのか、自分で交渉するのか。
お金がかかるなら、その金額も含めて見積もっておく(=同意取得をコストとして扱う)。 - 斜面の状況を改善する工事が必要だと仮定して、見積を取る
湧水・湿り・崩れ跡などが気になるなら、最初から「対策工事が必要」な前提で、造成・排水・補強の概算を押さえます。
楽観的にゼロ見積にすると、後で一気に崩れます。 - 費用の上振れを“許容する”と決める
これは「諦める」ではなく、その土地が上回る魅力を持っているから許容するという意思決定です。
ただし許容には上限が必要で、最悪ケース(上振れ込み)でも破綻しないラインを先に置く。
つまり、撤退ラインに当てはまる土地でも、
追加の手間と費用を見込んだ上で、上振れ幅が許容できるなら“チャレンジ”は成立し得る、ということです。
逆に言えば、その手間と費用を織り込んでもなお不確実性が残る場合は、魅力が強くても撤退の合理性が高くなります。
崖地は「安いから買う」より、「魅力が強いから、コストと不確実性を引き受ける」の方がうまくいきます。
6. チャレンジすべきはどんな時?(攻めの条件)
逆に、崖地が“武器”になるのはこんな時です。
- 土地の価格差が大きく、対策費を見込んでもまだ優位
- 眺望・静けさ・緑など、崖地でしか得られない価値が明確
- 行政確認・現地確認で不確実性を潰せる見込みがある
- そして何より、協力してくれる設計者/施工者に相談できる
崖地の成功は「土地」より「チーム」で決まります。
そして鎌倉・逗子のように、海と山が近く、眺望や緑、静けさといった“その場所ならではの価値”が大きいエリアでは、なおさらこの考え方が効きます。
魅力的な環境で家づくりをしたいという人ほど、土地を決めてから慌てるのではなく、
- まず条件(何を優先し、どこまで許容できるか)を整理して
- その条件を前提に、崖地の経験があり協力してくれる会社(設計・施工)を先に探す
この順番で動くほうが、結果的にいちばん近道です。
崖地は「買えるかどうか」より、「成立させられる相手に相談できるか」で前に進みます。
7. いちばん大事:協力者(工務店/設計事務所)の探し方
最も重要なスタート地点に立てるかどうか。ここが詰まりポイントです。
崖地は、普通の問い合わせだと断られやすいです。理由は簡単で、相手から見ると「責任が重い割に、話が固まっていない」からです。
なので、相談の出し方を変えるだけで、話を聞いてくれる確率が上がります。
ex.断られない相談の出し方
問い合わせの目的は、このように定義できます。
「買う前提ではなく、成立可能性の一次判断をお願いしたい(有料でも可)。
崖条例の対策が必要か、必要なら土木/建築どちらの方向が現実的か、概算レンジを掴みたい。」
そして添付・提示する情報はこれだけでOKです。
- 住所(町名まで)+地図リンク
- 造成・擁壁・崖の位置が分かる写真(遠景/近景)
- 前面道路の幅と状況(車が入れるかの一次情報)
- ざっくりの希望(眺望優先/駅距離優先/予算上限)
- できれば不動産資料(測量図・公図・概要書)
これで「検討の土台」ができ、相手も動きやすくなります。
どっちに頼む?工務店 vs 設計事務所
- 設計事務所が向く:崖条例・高低差・配置の工夫、部分RCなど「設計で成立させる」比重が高いケース
- 工務店が向く:工事条件を織り込みながら、現実的な施工方法とコストを詰めていけるケース
ここで、目的が「とにかく価格を抑えたい」「まず正確なコストを把握したい」なのであれば、最初に工務店へ相談する方がおすすめです。
理由はシンプルで、崖地のコストは“設計のアイデア”だけで決まるのではなく、
重機が入るか、仮設が必要か、施工手順をどう組むか、どこまで土木が必要かといった、施工側の現実で大きく変わるからです。
この部分は、工務店のほうが具体的な見立てを出しやすい。
また、崖地では「建築的にどう成立させるか」という発想が重要になる一方で、
それを検討するためにいきなり設計事務所へフィーを支払うより、
工務店の設計力(プラン提案・納まりの知見)でまず方向性と概算を掴む方が合理的なケースもあります。
ただし注意点もあります。工務店の中には、崖地の検討を進めるにあたって
「構造や敷地条件の整理は、設計事務所が入らないと難しい」という会社もあります。
その場合は、最初から無理に単独で進めようとせず、
- 工務店の協力会社として設計事務所を紹介してもらう
- あるいは 設計事務所に一次判断だけ依頼し、工務店へ戻して実行コストを詰める
といった形で、チームとして組むのが現実的です。
結論:コストを掴むなら工務店先行。必要に応じて、工務店のチームとして設計事務所を入れる。
この順番が、崖地では一番スムーズに進みやすいです。
8. まとめ|崖条例で詰まらないための「順番」
最後に、この記事の要点を“順番”でまとめます。
- 判断基準となる境界線を確認しに行く(崖の位置・水・逃げ/守りの選択肢)
- 不確実性を減らす(資料・現地・行政の確認で「分からない」を潰す)
- 最初から崖地前提の協力者に相談する(一次判断の依頼に落とす)
- 上振れ幅込みで腹落ちしたらチャレンジ(総額で優位なら武器になる)
崖地は、怖いから避けるものではなく、
「分からないを減らせるなら、価格差を十分取りにいける土地」です。
ここまで読んで「でも、自分の土地はどっち?」と思った方へ
崖条例は、一般論だけでは最後の判断ができません。
必要なのは “あなたの候補地”で境界線を引くことです。
初回相談では、候補地の資料(URL/図面/写真)を見ながら、
- 配置で逃げられるか
- 土木が必要なら、どこにどの程度か
- 建築で工夫するなら、コストが跳ねるポイントはどこか
を一緒に整理します。
「買う前の一次判断」として使ってください。
必要なら“撤退ライン”も含めて正直にお伝えします。

「何から考えればいいかわからない」
そう感じている段階こそ、相談のタイミングです。
一緒に、整理するところから始めましょう。
見 学 会 の お 知 ら せ
(〜開催予定〜)

