都心で狭小住宅|暮らしのミニマル化と間取りの効率化が最優先
どこまで
暮らしを
小さくできるか
暮らしのサイズ。1R、1LDK、2LDK、3LDK…
広くなるほど室の質を保つのも難しくなる。
手に届く範囲の暮らしを豊かにできれば良い。けれど人間、欲には勝てない。やはり広ければ広いほど良いという考えが根強く残る。それは致し方がないこと。理性的には小さくてもよいのだけど、どこか物足りなさを感じる。どこまで暮らしを小さくできるかは、各々の価値観によるところが大きい。
建築面積:8坪(26.4㎡)、10坪(33.0㎡)、12坪(39.6㎡)←北鎌倉の家、13坪(42.9㎡)
これらはワンフロア(1階だけ)あたりの最大面積で、12坪あれば比較的十分な広さだと実感しています。
狭小地の広さは30㎡〜40㎡程度が多く、ワンフロアの広さはワンルームマンション程度
首都圏、東京都内に数多く残っている狭小地。極小地の広さでもっとも狭く、よく目にするのは30㎡前後(価格が比較的安い)。実際に家を建てるとなると7〜8坪程度。1Kのワンルームマンション(25㎡前後が多い)に階段が付くので、決して広くないことはすぐに想像できる。
階数を増やすことも場合によっては可能ですが、階段が多くなることは、年齢を重ねることを考えると、登り降りが大変になるので、なるべく避けた方が無難だと思っています。
とはいえ、土地の取得の際に狭小地が候補になる場合でも、すぐに諦めることはしなくてもよいと思っています。
狭小地は階数が多く不便ではあるものの、総歩行距離で考えると検討に値する
狭小地の土地選びの判断基準のひとつの考え(言い訳にも思えるが・・)を紹介したいと思います。
駅からの距離で考えて、駅遠②の物件に辿り着く前に、階段を登って最上階に(例えば3、4階など)辿り着くことができるため、駅近の方が総歩行距離で比較すると利便性が高い。
①駅近(仮に徒歩5分)に住む:3、4階建ての狭小地(40㎡程度)
②駅遠(仮に徒歩15分)に住む:2階建ての一般的な広さ(100㎡程度)
つまり、家自体(間取り単体)で見ると階数が多いことは割と不便ではあるものの、駅からの距離も考慮したトータルの移動距離(総歩行距離)に置き換えてみると、駅近で階数が多くなることが決してダメとは言えず、十分検討に値すると思うのです。
とまったくもって単なる言い訳ですが
狭小地の土地選びにおいて、考え方を変えてみるのもあり。
土地までの「総歩行距離」がモノを言います。
実は、総歩行距離に置き換える考え方は、「高台の土地」にも同じことが当てはまり、たとえ土地まで階段(山道のような道)で登らなくてはならなくても、駅から遠い物件よりは早く土地に辿り着くことができる。(鎌倉にはこのような土地的には近くても段差があるが故に敬遠されている土地がたくさんあります)
狭小地に住むためのハードル(快適に住むための課題・工夫)は思っているより高かった
多くの場合、狭小地において注文住宅を建築することは、様々なハードル(快適に住むための課題・工夫)を超えなければならず、ライフスタイルと照らし合わせて考えなければならないことは確かです。実際に狭小地で建築計画を検討していたため、その難易度の高さは重々承知しています。
結果としては、狭小地での注文住宅は各々のライフスタイルに合う方は「全然アリ(他人からは、よく住めるね!と思われるかも)」だけど、万人受けはしない。特に子育て世帯にはおすすめできない。
(自分達は子育て世帯なので、狭小地は避けました)
今までに実際にいわゆる狭小住宅、極小住宅を数多く見学してきました。とても細やかな設計をされていて、参考になることばかりでしたが、見学後の感想は「よく住めるな」と感心というか、感嘆というか。色々な感情が芽生えたことを記憶しています。
自らの夢である自邸を計画する上で、最初は狭小住宅へのチャレンジも考えました。考えたというか、実際に土地探しや工務店のやりとりなどを通じて実践したのですが、当時の経済力(今も当然無理)では到底実現できるものではありませんでした。
そこに自分が住めるかと問われた時、心の底から「イエス」が言えなかったのも理由の一つ。いまだに諦めた訳ではないですが、子育てのことなどを考えていたりしていたので、極端に狭すぎる家は現実的ではないと判断しました。
ちょうどいい狭小地の広さの条件|ワンフロア40㎡程度の確保は必須
狭小地を選ぶための判断基準をひとつご紹介します。
一般的な単身世帯の1K・ワンルームマンションの広さは25㎡程度と考えて、階段やリビングとしての広さを考慮すると、ワンフロアの面積は40㎡が必要と考えています。
建築面積40㎡確保しようとすると、土地の面積がどれくらい必要になるかは、検討しているエリアの建ぺい率によって異なりますので、以下を確認するようにしてください。
- 100㎡(建ぺい率40%)
- 80㎡(建ぺい率50%)
- 67㎡(建ぺい率60%)
- 58㎡(建ぺい率70%)
- 50㎡(建ぺい率80%)
建ぺい率とは敷地面積(建物を建てる土地の面積)に対する建築面積(建物を真上から見たときの面積)の割合のことで、「建築面積=ワンフロア」の最大面積のことです。
建ぺい率は都市計画で各行政によって定められており、主に都市部(駅近)は建ぺい率が高くなります。建ぺい率が高くなると、必要な土地面積は徐々に小さくなりますが、㎡あたりの単価は駅近の方が高くなりますので、予算に応じてエリア選定をすることになります。
ということで総じて
駅近になると土地だけでも相応の資金が必要となりますが、普通よりちょっとだけ小さな家に住む覚悟さえあれば、都内近郊の「準都心」であれば、実現可能なことに気が付きました。
利便性を考えて、首都圏の都内へ電車で1時間くらいまでなら大丈夫だろう。もし本当に暮らすと仮定し、建築を考える際に小さな空間であることの優位性はなにか?を狭小住宅を見学した時を思い返しながら、自分なりに考えておくことにしました。
「あえて小さい」を選ぶことで、実現できる豊かな暮らしについて
「小さいことは豊かなこと」
小さい家のメリットは、日々のお掃除や中長期のメンテナンスなど、あらゆる重荷を、和らげてくれます。イニシャルコストとして建築費も抑えられますし、空調設備や電気代、修繕費用などといったランニングコストも安くできます。浮いたお金を、床壁天井などの材料をアップグレードし、良質な素材を使うこともできます。
北鎌倉の家では、小さいことのメリットを最大限に活かして、計画を進めました。工事費も抑えられるし、工事期間も短くなります。なんといっても、乏しい資金であっても、ひとつの空間をこだわり抜いて、集中して資金投下できるのも、狭小住宅のおすすめポイントです。
しかし、小さければなんでも、良いんだ。という訳ではありません。9坪ハウスが8坪に、そして7坪になったからといってすごい訳ではありません。もちろん面積が減った分は費用は抑えられますが、それが目的になってはならないと思います。
現実的には、それぞれのライフスタイル(家族構成や将来対応など)や資金計画が考慮されるので、その中での最適解であれば十分だと思います。暮らしの質にも関わることなので、コストカットは程々が良いと思います。
「東京に住むことは、質の高い生活体験を得ることである」
都心(仮に関東だと東京都23区内)に住居を構えることの最大のメリットは、日本中や世界から集まってくる「美味しいもの、美しいもの、楽しいこと、美しい音」など生活体験におけるグレードを高めることだと思います。しかも、それらが徒歩圏にあったり、電車で数分の場所で体験することができる。
そして、もしそれが評判のレストランであれば常連としてのサービスを受けることができるかもしれない。
自らが料理が得意であったり、サービスを受ける必要を感じていない方。例えば、主に自ら食事を作り、自宅で食事をするのであれば、都心への近さは不要であるのかもしれないですが、多くの方にとってメリットだと思います。
また、経済圏に近くに住むことで
移動時間が短縮されるため、生活体験の時間をより長く確保することもできます。
「勤務地に近い方が良い」という希望で
東京都内住まいを求める方がいますが
実は距離が近いということは、時間を得るということであり
その時間が、付加価値のある生活体験になることを認識すると、良い気がします。
暮らしを小さくするために、断捨離やシェアサービスを活用することもひとつの手。ただ、サブスクリプションというのは、結局のところ自分で所有していないので、いつか返さないといけないという、締め切りを頭の片隅に置いておく必要があります。
できれば頭の中は常にからっぽの状態にしていた方が、健康的だと思っているので、借りるという行為はできれば避けたいです。なるべく現物を所有して、不要なものはしっかり手放す。
「小さい暮らし」のキーポイントは家の中に置いておきたいもの(借りたくないもの)は、しっかり整理整頓・保管すること。北鎌倉の家を設計した時「暮らしはなるべく小さく、けれど収納は決して妥協しない」といった設計思想が根底にあり、デッドスペースを立体的にうまく利用したり、小屋裏のスペースの使い勝手に考慮したり、狭小住宅だけれど収納の量はかなり余裕があります。
暮らしのミニマル化と間取りの効率化は最優先ではあるものの、暮らしを小さくするために、余白をなるべく持つ。相反する考えかもしれませんが、余白を持つことで、その余白のサイズを再設計・再定義することで、真に小さな暮らしが実現できるのだと思います。
家づくりに必要なコト、ぜんぶ。
建築家が「ミニマルな暮らしのベースづくり」をサポートします。
\ お気軽にお問い合わせください /
見 学 会 の お 知 ら せ
(〜随時開催予定〜)