madorismの間取りをつくる建築家
原宏佑(はらこうすけ)
鎌倉市在住の建築家。

関東近辺で約3年の土地探しを経て、30代で北鎌倉に自邸を建築。家づくりを通して、物件探しに大ハマり、今でも鎌倉の物件情報に目がない。「鎌倉で次住むならここが一番だ!」を探し続けて、さすがに2軒目は自身では難しいので、誰かに実現してほしいと心から思い、間取りにストーリーを込めて日々作成している。

鴨川ミュージアム

京都鴨川を”愛でる”ミュージアム。
「感じて、楽しんで、遊んで、味わい尽くす。」

鴨川デルタの様々な地形を活かし、自然を取り込むことで、鴨川と一体となった空間を生み出す。

京の歴史を感じる上で、欠くことのできない鴨川。

鴨川を通じて、京都の魅力を世界に発信するための建築。

ここはちょうど賀茂川と高野川が合流する場所であり、様々なモノ・コトが入り混じり、環境が日々刻々と変化している特殊な場所である。

・建築としてどういう空間を提供できるか。
・どういう体験がここで可能なのか。
・どういう空間が”ミュージアム”としてふさわしいのか。

鴨川の境界の”イノベーション”

賀茂川と高野側の”合流地点”である鴨川デルタ一体を囲うように”ループ状の建物配置”とし、「生きてきた鴨川」を体験できるミュージアムとして計画する。

建物の輪郭によって切り取られらた内と外。
「鴨川の風景」「京都の山々の風景」「洛中洛外」

比叡山、京都五山、糺の森、下鴨神社、葵祭など、京都の伝統、歴史の断片がこの場所には積み重なっている。

”これからの京都”を世界に発信するための拠点として「鴨川デルタ」を生まれ変わらせる。

だれもが気軽に訪れることのできる公園

鴨川にはそんな空気が流れており、この建築にもそのような空気が感じられれば良い

人と自然と建築が一体となった風景。

あるものを生かすことによって、まちが豊かに見えてくる。

どこにでもあるようで、この場所にしかないもの。

鴨川デルタの独特の雰囲気を生み出している3つの地形。

右岸・左岸・三角州

3つの場所をつなぎ、鴨川デルタの空気感、流れを建築に取り込む。

鴨川の延長のような建築を生み出したい。

浸透

浸透する
皮膚から体内へ浸透するように

浸透する

水は空を流れる

重力に逆らうことなくとりとめもなく流れる

流れる水はただの水

ここに水を受け止める外皮がある
外皮は水を受け止め、外皮にたまる水はさらに内へと浸透する

視界を遮る一枚の壁は、見たいという欲求によって溶けるように分解されていく

気ままな雲

空気のような建築
雲のような建築
透き通っている建築

この場所の空気

どこからともなく人がやってきて、去っていく

この建築は雲を生み出す装置である

都市の中に豊かな自然(山、森、川)が存在し、それらは多くの粒子を集めてくれる

やがてそれらの粒子は大きな雲となり、都市に恵みの雨を降らす

この建築はその場所の空気を切り取ったようなもので

霧がたったり、晴れたりするように、人の密度によって空間の質が変化する

まるで人が粒子のように自由に動きまわり、集まり、疎になり、消えていく
それはまるで空に浮かぶ雲のように、はかない

つかむことのできない雲をつかんでみたい

これからの美術館

1 | BORDERLESS MUSEUM | 境界のないミュージアム

可能な限り多くの人が美術館のもつ知の総体に容易にアクセスできるようにすることを目指しています。
知の総体には所蔵資料はもちろんのこと、情報やサービスなど、ミュージアムがもつあらゆるソースが含まれています。
このミュージアムは鴨川の日常的な利用と、新たな文化の創造性など、鴨川と人々との関わりを促進するための場所を作り出します。

鴨川には京の歴史が生きており、人々と深い結びつきがあります。

2 | OPERATING SYSTEM | 美術館の運営方式

この鴨川ミュージアムは市民による、市民のためのミュージアムを目指しています。

従来のミュージアムと違いこのミュージアムは「生きている鴨川」を伝えるため、鴨川で行われるあらゆるジャンルの情報収集、発信の拠点となります。

つまりそれは、団体、個人の大きさに関わらず、それぞれが容易にミュージアムを運営することができ、かつ可能な限り多くの人に鴨川の活動情報、文化、芸術、音楽など、その情報量の大きさに関わらず伝えることができる場所を生み出すことを目指しています。

ミュージアム本来の役割、機能とは作品を保存し、管理し、幅広い市民に対して展示することであり、それ以上のものではありません。
そのことを認識したうえで、鴨川ミュージアムは、鴨川が持つ自由な気風を生かし、さまざまな観点を発見する機会を提供し、新たな鴨川の文化創造を促進するというコンセプトを持っています。

これを具体化するために、常設展示、企画展示、市民ギャラリーの展示替えをできる限り頻繁に行うことができるようにします。
常に変化する鴨川においてその変化に対応するように、ミュージアム自体も変化に富む空間構成としなければなりません。

3 | POTENTIAL OF NEXT MUSEUM | これからの美術館の可能性

ミュージアムにできること、鴨川が伝えられること

生きた文化遺産を人々に提示していかなくてはならない。だからこそ、常設展示と企画展示のバランスが重要となります。

常設展は私たちに鴨川の全体像を示し、企画展は「もの」に対する深い考察と、人々の間にある議論をミュージアムの中に反映させることを使命とするべきである。

現在政治は急速に変化し、メディアの文脈も日々刻々と変化しています。
しかし、こうした変化に惑わされたくありません。

美術館は、神社でも、寺でもありませんが、人々のための民主的な、国家的な、所蔵作品のための場所です。

コロキウムやシンポジウムなどで歴史的、あるいは宗教的な問題を議論するなど、補完的な活動を行う必要もあります。
一つの主張をするときに、別の方法で補っていくという総合的な視点が必要です。

美術館に対する見方を建築によって180°転換させることを意識させたいと考えています。

2012年2月
鴨川公園整備計画
出町柳三角デルタ公園整備計画
京阪電鉄出町柳駅再開発事業
妙音弁財天境内整備計画
【Type】建築/Architecture
【Sort】鴨川ミュージアム/Museum
【Site】京都市/Kyoto