Shop A
徳川御三家である紀伊国の城下町の風情を伝える町家がちょうど建物の隣にある。
今の店主の祖父が戦後まもなく始めた商いを創業とし、約70年の歴史がある。
現在の建物は祖父の代のもので老朽化が進んでいるが
外観は緑青で覆われており、建物自体が重厚感のある金属の塊のようであり、見るものを圧倒する。
その外観と相反するように、内部空間は木をふんだんに用いた芳醇な空間である。
とあるショップのリニューアルオープンの計画であるとともに、新たにSOHOとしての用途を付加されたアート空間の提案。
限られた予算の中での計画ではあったものの、すでにある建物の重厚なファサード(建物の外観)が十分すぎるほどのインパクトをもっていたため、私たちは外観上の変更は特に考えなかった。
そこで、できるだけ要素を少なく最小限にすることを第一に考え、外観の印象を変えずに新たなデザインエッセンスを組み込むための手法として門型のゲートを出入口に設けることにした。
門型のゲートはその形態の性質上”あちら側”と”こちら側”をつなぐためのアイコンとなり、人を導く仕掛けとなる。そのことがあたかも操作されたかのようではなく、あくまでも自然体で建物に寄り添うことによって、この門型のゲートは必然的にショップの新たな顔となる。
通りかかる度に、中が気になり入ってみたくなるような、その門型のゲートがそこにあるだけで、そっと声をかけられているように感じられるような、そんな優しい建築のあり方について考えてみた。
2015年7月
物販店舗
【Type】建築/Architecture
【Sort】店舗/Shop
【Site】和歌山県和歌山市/Wakayama